トヨタ・MR-S(エムアール-エス)とは、トヨタ自動車が製造・販売していた2シーターの自動車である。オープンタイプ(手動ソフトトップ)のスポーツカーで、MR2の後継車である(初代MR2から数えると3代目になる)。なお、この車種の製造に関してはMR2同様、セントラル自動車が担当していた。
2代目のMR2がパワースペック競争に巻き込まれた結果、シャーシの熟成が間に合わず、挙動が読み辛いうえにピーキーなクルマとなり、とても「Fun to Drive」(初代当時のトヨタの企業スローガン)どころではなくなっていた。MR-Sではその反省に立ち、同社のヴィッツ系のコンポーネントを流用しつつ、スポーツカーとしての側面を追求する為に、MR2にはあった後部トランクが撤廃されたが、代わりにシート背面にラゲッジスペースを備えている。
先代のMR2と同様に前輪駆動車のパワーユニットを後方に平行移動する手法で部品等を流用している。MR2同様にトランスアクスルが後輪の直上、エンジンはその前方とかなりリア寄りに置かれ、前後重量配分も後部が重い。徹底した軽量化により、当初は1tを切る重量で作られたが、強化された衝突安全アセスメントへの対応などのためマイナーチェンジで補強が行なわれ、最終的には当初よりも40kg程度重量が増加している。また、重量が増加しているにも関わらず、エンジンには何も手が加えられていない。その為、マイナーチェンジにより強度は補われたが、パワーウェイトレシオは悪化した。サスペンションもまたMR2同様に前輪駆動車のフロントサスペンションに多いストラット式サスペンションがリア側にも採用されており、スポーツカーには珍しく、前後ともにストラット式となっている。
車名は日本国外向けも含めてMR-Sという名前に変更する計画があったが、英語圏ではMrs(ミセス)の意味となり、スポーツカーに相応しくないという理由で、日本国外(欧州・豪州)ではMR2が継続された。
米国向けはオープンカーとなったことを明確にするため、MR2 Spyderとなった。なお日本国内ではスパイダーの商標はダイハツが保有。またフランス向けは初代よりMRの名称として輸出されていた(MR2をフランス語読みすると、merde(糞)に音韻が似ていることから忌避された)。なおMR-Sの"MR"はミッドシップ(Midship Runabout)を指している。
同クラスのオープン2シータースポーツカーとしてマツダ・ロードスターがあるが、2代目のNB型ロードスターと 販売開始の時期(1999年と1998年)やパワー(140psと120~160ps)、重量(1t前後と1t強)、値段(200万前後)など似通った部分が多く、度々ライバル車とされる。しかしながら、ロードスターはNB型だけでもMR-Sより短い販売期間で29万台以上を生産しており、総生産台数では大きな差をあけられる事になった。
売れ行きはさほど伸びず、2006年には年間生産台数が1000台程度まで落ち込み、スペシャルティカー縮小の影響もあって、2007年7月末に生産終了となった。総生産台数は77,840台で、他社の同クラスのオープン2シーターモデルと比較すると少ない。また、生産中止前にFinal versionが1000台限定で販売された。(ブラックカラーのレッドトップやメッキ風エアインレットガーニッシュなどの特別仕様が設定)MR-Sの終了と同時に、トヨタはスポーツカー事業から撤退したことになる。
なお、国内向けのエクステリアにはトヨタマークが一切なく(車内のステアリングにのみ描かれている)、代わりに「MR」を図案化したエンブレムがある。
エンジン
全車に排気量1,800cc、最高出力140馬力/6,400rpm,最大トルク17.4kgm/4,400rpmの1ZZ-FEエンジン(直列4気筒DOHC・VVT-i)を搭載。同エンジンは100kg程度と軽量であり、セリカのSS-Iなどにも搭載されている他、1,800ccクラスのエンジンとしてはトヨタ車の標準的なエンジンであり、幅広い車種に搭載されている。
トランスミッション
MTとセミATのシーケンシャルマニュアルトランスミッション(SMT)の2種類があり、初期型は5速、マイナーチェンジ以降は6速となっている。ATの設定はない。国産量産車では初めてのSMT搭載車である。
車名の由来は、「Midship Runabout Sportsopencar」ミッドシップ・ランアバウト(ラナバウト)・スポーツオープンカーの頭文字から創作された造語。エムアールエスと読む。