GMC (ジーエムシー) とは、アメリカの自動車メーカー、ゼネラルモーターズ (GM) が北アメリカおよび中東地域で展開している商用車およびライトトラック(ピックアップトラック・SUV)のブランドである。
日本への正規輸入は行われていないが、並行輸入車が入手可能である。
かつては消防車、救急車、ヘビーデューティートラック、軍用車両、キャンピングカー、輸送バスも製造していたが、現在はSUV、ピックアップトラック、バン、ライトデューティートラック、ミディアムデューティートラックのみを製造している。
セダンやクーペなどの一般的な乗用車は扱っていないが、それらの車種を扱うビュイックや(ブランド廃止された)ポンティアックとは販売網が統合されている。
ほとんどの車種はシボレーのバッジエンジニアリング車である。最大の相違点は車体正面に付けられた赤色 (それ以外の色もある) の「GMC」バッジだが、豊富な標準装備やオプションを取り揃えて差別化を図ることも多い。
特に高級仕様である「デナリ」の設定はシボレーにないGMCの大きな特徴である。このデナリグレードは、トレードマークとなるハニカムグリル、専用バンパー、サイドの「デナリ」エンブレム、大径アルミホイール、様々なクロームのアクセントなどで外観のアップグレードを図り、内装では本革や木目調部材を使用し、ステアリングホイールには「デナリ」ロゴが入るほか、様々な快適装備が標準で用意される。
そして、希望小売価格もノーマルモデルと比較して大幅に引き上げられている。
1901年、マックス・グラボウスキー (Max Grabowsky) は「ラピッド・モーター・ビークル・カンパニー」 (Rapid Motor Vehicle Company) を設立し、商用トラックの原型となる車をいくつか開発した。トラックは1気筒エンジンを使用していた。
1909年、ラピッドはゼネラルモーターズによって買収され、GMCトラックの由来となるゼネラルモーターズ・トラック・カンパニーの土台となった。
GMはまた、1908年に別の独立系トラックメーカー「リライアンス・モーター・カー・カンパニー」 (Reliance Motor Car Company) も買収していた。
ラピッドとリライアンスは1911年に合併して「ゼネラルモーターズ・トラック・カンパニー」となり、1912年に「GMCトラック」ブランドがニューヨーク国際オートショーにて初めてお目見えした。
全体におけるGMCブランドの貢献はほんの372台に過ぎなかったものの、約22,000台のトラックがこの年に製造された。翌1913年にはラピッドとリライアンスのトラックは全てGMCブランドに代わった。
1916年、GMCトラックはアメリカ国内をシアトルからニューヨークまで30日間で横断し、1926年にはGMCの2トントラックがニューヨークからサンフランシスコまで5日間(と30分)運転された。第二次世界大戦中、GMCトラックはアメリカ軍用トラックを60万台製造した。
1925年、GMはジョン・D・ハーツによって創業されたイリノイ州シカゴのバス車両メーカー、イエロー・コーチ (Yellow Coach) の支配権を取得した。
1943年に残りの株式を買収した後、GMは同社を「GMトラック・アンド・コーチ・ディヴィジョン」(GM Truck and Coach Division) と改名し、1980年代までカナダとアメリカ合衆国で都市間輸送バスを製造した。
GMは1970年代末~80年代に競争の激化に直面し、ほどなくしてバスの製造を打ち切った。
1987年、GMCは自社のバス車種をTMC(トランスポート・マニュファクチャリング・コーポレーション)社およびカナダのMCI(モーター・コーチ・インダストリーズ)社に売却し、それは後にノヴァ・バス (w:Nova Bus) の手に渡った。
ミディアムデューティートラックの分野では、1984年にいすゞからOEM供給を受けてフォワードの販売を開始した。
この業務提携は現在においても継続している。
一方、ヘビーデューティートラック事業では、1986年にGMとスウェーデンのボルボとの間でヘビーデューティートラックの製造・販売の合弁会社を設立するも、1987年にアストロ95(シボレー・タイタンのGMC版)とジェネラル(シボレー・バイソンのGMC版)の製造を打ち切り、1989年にはブリガディアー(シボレー・ブルーインのGMC版)の製造も終了して、GMCは1911年以来続けてきたヘビーデューティートラック市場から撤退してしまった。
以降、GMCはライトトラックに注力していくこととなる。
いずれも短命に終わったものの、1991年から1992年にかけてソノマおよびS-15ジミーの高性能版であるサイクロンやタイフーンを登場させて、シボレーとの差別化を図った。そして1996年、乗用車からGMC車への乗り換えを促すべく、ブランド名から「トラック」を削除して単に「GMC」とした。
1998年にはリンカーン・ナビゲーターに対抗してユーコンに高級グレード「デナリ」を設定し、以後他のGMCの車種にもデナリを展開していくことになる。
2002年、前身のラピッド設立から数えて100周年を迎え、GMCは会社の全歴史を解説した“GMC: The First 100 Years”と題された本を出版した。
しかし、この2000年代においては原油高をきっかけとする中大型ピックアップ・SUVの需要縮小に直面し、GMCはラインアップの変革を迫られることとなった。
2000年代後半にシエラやユーコンのハイブリッド仕様を投入して大型車の燃費改善を図る一方で、2007年に初のクロスオーバーSUV (CUV) となるアカディアを、2009年には中型CUVのテレインを相次いで投入した。
さらに2010年の北米国際オートショーでは小型トールワゴンのコンセプトモデル「グラニット」を出展した。