クラウン(CROWN)は、トヨタ自動車が1955年より製造、販売する乗用車のブランド。日本を代表する車種の一つである。
初代から3代目までは、ブランドと自動車検査証の車名が「トヨペット」であった。
名前は「王冠」の意味であり、初代から現行型までフロントグリルのエンブレムにも使用されている。
日本国内市場に重点を置いた車種で、トヨタの量販車の中でも最上級モデルの地位を長く担い、「いつかはクラウン」のキャッチコピーに象徴されるように、一般に高級車として認知されている。トヨタ自動車を代表する車種の一つであり、その長い歴史を通じ、官公庁等の公用車や多くの企業の社用車として用いられてきた。
信頼性や耐久性の高さから、タクシー、ハイヤー、教習車(発売された1955年から道路交通取締法が施行されていた1960年12月19日までは小型自動四輪車免許の教習車、1960年12月20日の道路交通法施行以後は普通自動車免許の教習車)、パトロールカーといった業務用車両や特殊車両として使われることも多かった。
歴代シリーズでは8代目(1987.9 – 1991.10)の販売台数が最高である。
現行車種の車体形状は4ドアセダンのみだが、以前には2&4ドアハードトップ、ステーションワゴン、ライトバン、ピックアップも存在した。一時はボディスタイルを優先してドアガラスのサッシ(窓枠)を廃した4ドアピラードハードトップが主流であったが、S170系以降はハードトップのスタイルを継承しながらもサッシ付のセダンとなる。
これら大型車種とは別に近年では、旧型のX80系マークIIのコンポーネンツをベースに、車体を5ナンバーサイズ及び中型タクシーの枠内に納め、耐久性やランニングコストを重視して開発されたクラウンコンフォート、装備及び内外装を充実化したクラウンセダンというモデルが設定されている。前者はタクシーなどの営業車専用モデル、後者は主に公用車や個人タクシー向けである。何れも、クラウンの主流モデルが大型化・高級化したことによる下位カテゴリーの車種空白を埋めるため、「クラウン」のネームバリューを利用して開発された、実質は別系統の車種である。
当初からオーナードライバー向けとして開発され、その時代ごとに、トヨタが提案し、消費者が求めて続けた日本の高級車像が反映された結果、現在ではロイヤルサルーンシリーズがクラウンの販売の主流となっている。ロイヤルサルーンシリーズがクラウンの正統な血統である。
クラウンといえば「お年寄りのクルマ」というイメージが強い。実際、ユーザーの平均年齢は60歳に達している。若い年齢層にとってみると、アメリカ車のようなフワフワな乗り心地のクラウンより、ベンツやBMWといったドイツ車風の乗り味がいい、ということなんだろう。トヨタも事情を理解しており、クラウンのフルモデルチェンジにあたり、ガラリとイメージを変えてきた。
例えば乗り心地。初代クラウンがデビューした当時の高級車はシボレーやキャデラックといったアメリカ車。ガタガタ揺すられるトラックのような乗り心地の国産車からすれば、雲の絨毯のようだったろう。当然クラウンもフワフワな乗り心地を開発目標とした。インテリアやシートだってソフトなファブリック(布)を多用。かくして憧れのアメリカ車に近い日本の高級車が生まれたのだ。
しかし時代は変わる。道路の舗装率が高くなり、走行スピードも上がってくると、車体を思い通り操る必要が出てきた。特に日本の道は狭く、高速道路でさえ曲がりくねっているため、アメリカ車のように「走行する場所が30cmずれても問題ない」では不満。日本のような道路事情で快適に走れるヨーロッパ車に乗ってみると、予想以上に運転しやすい。
そんなことからアメリカ車に対する憧れの無い世代は、こぞってヨーロッパ車風の乗り味を求めたのだ。だからこそキャデラックやリンカーンは売れなくなり、ドイツ製高級車が人気になったワケ。クラウンも「もはやこれまで」と観念したのだろう。ハッキリとベンツ、BMWをターゲットとしてきた。開発目標を定めた時のトヨタは強い。今までのシャシやエンジンを全て捨て、ゼロから開発したのである。