ビュイック (Buick) はアメリカ合衆国の自動車メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)が製造・販売する乗用車のブランドのひとつである。
現役の自動車ブランドとしてはメルセデス・ベンツ、ルノー、プジョー、GMC等に次いで世界でも古参に数えられるブランドである。現在はアメリカ、カナダ、メキシコ、中国、台湾、イスラエルで販売されている。
GMのブランド群の中では大衆車ブランドのシボレーより上級の中級車ブランドに位置づけられ、主に中大型の乗用車を扱う。ライトトラック(ピックアップトラック・SUV)中心のGMCや小中型の乗用車を中心とするポンティアック(ブランド廃止)とは販売網が統合されており、それによってラインアップの相互補完がなされている。
ビュイックの起源は1903年まで遡る。イギリス系アメリカ人、デビット・ダンバー・ビュイックによってミシガン州フリントに設立された「ビュイック・モーター社」がその前身となっており、同社はOHVエンジンの開発によって売上を順当に伸ばしていたが、翌1904年にジェームズ・ホワイティングによって買収される。
ジェームズは同社の管理を新たに招聘したウィリアム・C・デュラントに委ね、デビット・ビュイック自身は保持していた同社の株を破格の値で譲渡して同社の経営より離れる。ウイリアム・デュラントは優れた経営手腕を持っており、販売網とサービスを強化したためビュイックは数年のうちにたちまち全米でも有名な自動車メーカーとなった。
同社は後にオールズモビル、キャデラックと共にゼネラル・モーターズ・カンパニーを組織し、ウィリアム・デュラントによってビュイックはGM内においてキャディラックに次ぐハイ-ミドルエンドの自動車を供給する位置付けと定められた。
1929年には、前年にキャデラックが廉価版の「ラ・サール」ブランドを展開したことを受けて、ビュイックの販売部門はビュイック・ブランドとGM内でミドルエンドを担っていたオールズ・モビルとの間に存在した価格帯を埋める位置付けで「マルケット」ブランドを開始する。しかしその目論見は失敗し、単年度の展開を持って終了する。
この頃より日本などへその販路を広げ、アメリカを代表する大型高級車として親しまれた。またその後は第二次世界大戦と戦後の好景気を経て、アメリカの保守的なアッパーミドル層向けの上品なハイ-ミドルエンド高級車としての位置を保ち、フォードのマーキュリーなどを主なライバルに、「ルセーバー」や「リビエラ」、「センチュリー」や「パークアベニュー」などの主要車種がアメリカ内外で高い人気を維持し続けていた。