ホンダ・NS-1(エヌエス-ワン)とは、本田技研工業が、1991年(平成3年)から1999年(平成11年)まで製造販売を行っていた50ccの原動機付自転車(スポーツレプリカバイク)である。現在は生産を終了している。通称はエヌワン(N1)。
最大の特徴はその車体設計である。フルカウルを装着したスポーツレプリカでありながら、通常車両の燃料タンクに相当する部分を開けると、一般的なフルフェイスヘルメットが収納できる大容量スペースを持っていた。また車格も上位クラスに相当し、その性能と外観からヤマハ・TZR50、TZR50Rと人気を二分した(メットインによる使い勝手の良さもあってか、販売台数はNS-1が勝っている)。
1995年のマイナーチェンジによって、ヘッドライトが「横長型」からホンダ・RVFをイメージした「丸目2灯型」に変更されたほか、細かな仕様変更もされている。点火装置の変更、ジェネレーターの発電容量の小型化、インテークチャンバーの装着などである。
カラーリングなどの変更を加えられつつレプリカブーム終了後も人気を保っていたが、環境規制によるホンダの4ストロークエンジンへの移行のあおりを受けて発売終了となった。
競技専用車両を除けば当車に比肩しうる車両がラインナップに存在せず、同型エンジンを搭載するNS50FやNSR50などの部品が流用できるなどライバル車に比べアフターパーツが充実しているためと考えられる。
また社外パーツも多数存在するため、比較的容易に自由度の高いチューンナップが可能であるが、特異なフューエルタンク配置が災いしてサーキットなどではあまり用いられない(ただし競技専用車両としてモリワキが当車をベースに開発したレーサー・MH80Rが存在する)。
性能と外観、使い勝手の三者両立をした当車だが、価格を抑えるために省略された部分もある。
フロントフォークはスライドメタルが省略されており、条件によってはフロントフォークの動きが悪くなること、また外見上重厚なアルミフレームに見えるため分かりづらいが、他社と同じく薄手の鉄フレームを採用していることなどである。これらの点はNS-1の弱点とされる。
生産終了後10年弱にも関わらず未だに現役の個体が多い。上記の通り人気で良く整備されるのもその理由の一つであるが、「2ストカブ」と呼ばれるAC08系エンジンの耐久性も一役買っている。シンプルな設計に情報量が豊富なのもあって、一通りの技術と知識があれば個人でのオーバーホールも可能である。
なおスペインホンダ製のNSR75は、NS-1の車体にNSR80のエンジンを搭載した車両にあたり、NS-1でメットインスペースであるところがガソリンタンクになっており、タンデムシートとタンデムステップが装備されている。